総説・解説記事等 - 榑沼 範久
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「人間の可能性を読み解くー「都市のあとに来るもの」へ向けて」
榑沼 範久
『IUI YEARBOOK 2022/2023』 ( Vol. 12 ) 24 - 35 2023年3月 [依頼有り]
記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(その他) 単著
アンリ・ルフェーブルが『都市革命』(1970)で示した社会の「完全な都市化」の仮説は、自然から都市に向かう歴史の図式を依然として前提にしてしまっている。この図式を前提にする限りは、都市を超えるもの、都市のあとに来るものを想像することも思考することもできない。都市とは自然と対極にある完全な人工世界というイメージに、われわれは閉じこめられてしまう。しかし、固定した都市ではなく都市化というプロセスをルフェーブルが重視するならば、自然から都市に向かう歴史の図式よりもむしろ、都市化とは「集めること」を本質にするという『都市革命』の別の論点を重視する必要がある。都市化とは「集めること」である。そしてこの都市化が作動する限り、どの地点も「中枢」になることができる。逆に言えば、都市化が停止した「都市」というものもあるのだ。この論点を拡張することで、われわれは自然から都市に向かう歴史の図式を緩め、解し、完全な人工的都市でも、程よく自然を混ぜ合わせた未来都市でもなく、都市を超えるもの、都市のあとに来るものを想像、思考し、その制作に向かうことができるはずだ。しかしルフェーブル『都市革命』には「集めること」の論理的・具体的な展開が欠けている。そこで後期マルティン・ハイデガーの「四集」する「世界」(四集界)の哲学を、ルフェーブル『都市革命』接続した。ハイデガーの「四集」におけるエレメンツは大地、天空、神的なものたち、死を定められたものたち(人間)である。この四集界の概念の利点は、自然から都市に向かう歴史の図式を前提にすることなく、世界史を思考できることにある。人工と自然を問わず四つのエレメンツの集合の様相を見るのである。やはり人間でなければ辿り着けない奥深い世界がある。四集界の哲学も示すように、その奥深いところには人間だけの力では辿り着けない。都市を超えるもの、都市のあとに来るものもまた、人間にしかきっと作ることができないが、同時に人間だけでは作れないものなのだ。ただしハイデガーの哲学は四つのエレメンツが完全に一つになることを理念とするあまり、世界史の具体相を構想するには不十分である。ハイデガーの概念を組み換えていかなければいけない。
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「炎を育てよ—栗山斉の系譜」
榑沼 範久
栗山斉『無にみつるもの』 40 - 43 2023年12月 [依頼有り]
記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(その他) 出版者・発行元:(九州⼤学⼤学院芸術⼯学研究院 単著
蛍光灯、ネオン灯、ガラス管、鉛鏡、ステンレス、アルミニウム、シリコン、電線、LED、真空、大気圧などを使用する 《0=1-another》《0=1-filament blue》《真空の種》《symbiosis》《真空トンネル》など栗山斉氏(九州大学大学院芸術工学研究科准教授)の作品を、芸術と科学が分割されることのないSF(スペキュラティヴ・フィクション)の世界制作と見立てた。そして、完全な無としての真空が存在するかどうかを論争するのではなく、改良を重ねた空気ポンプで可能な限り空気を抜いたものを「真空」と見なし、そこに実在するものを実験室に入る誰もが見ることができるようにしたロバート・ボイルの系譜に、栗山作品を位置付けた。この系譜には、マイケル・ファラデーがロンドンの王立研究所で行った有名な連続講演「ロウソクの化学史」(ロウソクの科学)を目の当たりにした者たち、なかでもその講演を熱心に記録し、序文を寄せたウィリアム・クルックスもいる。ファラデーの講演に「〈学(サイエンス)の光明(ランプ)〉」を灯されたクルックスは、ボイルの意匠を受け継ぐ真空管(クルックス管)を制作して電気を放ち、陰極線(真空中を陰極から高速度で陽極に向かう電子の流れ)を可視化することに成功した。さらには、クルックス管から放射される不思議な電磁波をヴィルヘルム・レントゲンはX線と名づけ、見えるものと見えないものの分割を、誰の目にも明らかなすがたで動かしてみせたのだ。ファラデー「ロウソクの化学史」の序文を結ぶクルックスの言葉を、この系譜の未来に灯したい。「〈学(サイエンス)の光明(ランプ)〉を燃やさなければならない。」「炎を育てよ(Alere Flammam)。」
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「地盤の表象化とモデル化について」
菊本統+榑沼範久
『IUI YEARBOOK 2021/2022』 2022年3月 [依頼有り]
記述言語:日本語 掲載種別:その他 単著
安政の大地震以後に流行した鯰絵を、近代科学以前の迷信と見なすのではなく、制御の難しい地質の具体性を象徴する的確な見立てとして把握しなおすことから、地盤を把握する方法と諸相をめぐる問題提起を行った。鯰絵と対比すべきは、放射性廃棄物の最終処理場の図である。地下深くまで建造される処理場の構造は概観できるものの、その構造体の環境である肝心の地質がホワイトアウトあるいはブラックアウトしてしまっている。これは近代科学を牽引した天文学者の「環世界」(ユクスキュル)の挿絵にも共通点がある。天文学者が生きているはずの地球環境がブラックアウトしているのである。ならば、地質学者の「環世界」はいかなるものか。この問いはこれからの人類にとってますます重要な問題になると考え、現代の地盤力学者にそれを問いかけることになった。また、近代科学の進展する同時代に、芸術家、思想家、地質学者たちは、どのように大地を、地質を、地盤を把握し、表象してきたのか。レオナルド、キルヒャー、ゴッホ、ムンク、セザンヌ、ヴェルヌ、ダーウィンを例に事例をたどった。また、現代日本の大地表象として、小松左京『日本沈没』に登場する異能の地震学者の仮説を論じ、対談相手である現代の地盤力学者がどう大地をモデル化、数値化するか、その視座や手法と対比させながら語り合った。
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榑沼範久
栗山斉「内なる無限の宇宙」展パンフレット 2019年12月 [依頼有り]
記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(その他) 出版者・発行元:ART FRONT GALLERY 単著
栗山斉「内なる無限の宇宙」を観るわれわれは、不完全な「暗い星」を抱握しようとする、それぞれ不完全な「暗い星」になるのかもしれない。不完全とは、否定的な意味で言うのではない。作者も作品も観客も完全なるものではなく、いずれもが活動する実在として、ある程度は制御された禍々しさとして、ギャラリー(不完全に明るい部屋、不完全に暗い部屋)で衝突し、何ものかを限定的に合生させるのだから。「内なる無限の宇宙」が設置された不完全に無音なギャラリーのなかで、見えない内なる音がわたしに聴こえてくるならば、それはキング・クリムゾン「アスピックゼリーに入るヒバリの舌(Part I)」(Lark’s Tongues in Aspic, 1973)—いまにも壊れそうな制御された空間のなかで、切断や陥没や屈曲や消散の可能性を予期させながら微粒子が揺動し、ガラスや金属の結晶がこすれ合う音—に近似するのかもしれない。あるいは、「破砕(Fracture)」(Starless and Bible Black, 1974)—静謐なエネルギーだまりの沈黙を突然、理由もなく烈しく破って旋回していく音—や、それが消滅したあとにおそらく持続する、色とりどりの「無音」の痕跡や軌跡に。あるいは、「暗い星が衝突する、その光を灰に注いで/理由は裂け、諸力は枢軸から剥離する」「物質の無形の反射のなかで鏡は粉々になる/旋回する氷状の弁花へと溶解するガラスの束」(グレイトフル・デッド「Dark Star」、『LIVE/DEAD』、1969)のごとく。
その他リンク: https://www.artfrontgallery.com/exhibition/archive/2019_10/3956.html
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榑沼範久
10+1 website 2017年8月 [依頼有り]
記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(商業誌、新聞、ウェブメディア) 単著
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「人間的、あまりに人間的」な都市を離れて
『IUI YEARBOOK 2015/2016』 2016年3月 [依頼有り]
記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(大学・研究所紀要) 出版者・発行元:横浜国立大学都市イノベーション学府・研究院 単著
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「マニラの三木清 戦場(フィールド)について」
榑沼範久
『IUI YEARBOOK 2014/2015』 ( 2014/2015 ) 55 2015年3月 [依頼有り]
記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(大学・研究所紀要) 出版者・発行元:横浜国立大学都市イノベーション学府・研究院 単著
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「絵を手掛かりに歴史展望」
榑沼範久
東京新聞 日刊 2014年10月 [依頼有り]
記述言語:日本語 掲載種別:書評論文,書評,文献紹介等 単著
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「「測り得ないもの」に開かれた建築の "知性" と "想像力" のために」
塚本由晴、榑沼範久
10+1 web site 2014年5月 [依頼有り]
記述言語:日本語 掲載種別:その他 共著
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「いま、都市は文化を生み出すのか」
榑沼範久、藤原徹平
『対話 都市イノベーションを廻る思考 2012-2014』 2014年3月 [依頼有り]
記述言語:日本語 掲載種別:速報,短報,研究ノート等(大学,研究機関紀要) 出版者・発行元:IUI(都市イノベーション研究院) 共著
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「都市と世界の未来―レヴィ=ストロースの南米を読む」
榑沼範久
『IUI YEARBOOK 2013/2014』 2014年3月 [依頼有り]
記述言語:日本語 掲載種別:速報,短報,研究ノート等(学術雑誌) 単著
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10+1 web site 201401 2014年1月 [依頼有り]
記述言語:日本語 掲載種別:書評論文,書評,文献紹介等 単著
その他リンク: http://10plus1.jp/monthly/2014/01/enq-2014.php#16716
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「混沌を生き抜く人間描く―ミケランジェロ」
榑沼範久
東京新聞(12月8日・日刊・読書欄9面) 2013年12月 [依頼有り]
記述言語:日本語 掲載種別:書評論文,書評,文献紹介等 単著
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「都市・いくじなしの風景」
榑沼範久、北山恒
『nobody』 39 84 - 87 2013年7月 [依頼有り]
記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(商業誌、新聞、ウェブメディア) 共著
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「日記、プライヴェート/パブリックの境界にある『ゆらぎ』へ」
坪井秀人、榑沼範久、岡村恵子
『第五回恵 比寿映像祭―パブリック ダイアリー』(東京都写真美術館) 2013年2月
記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(商業誌、新聞、ウェブメディア) 共著
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「ふるさと、僕はまずここで(逆立ちして)見ることから学んでゆくつもりだ」
10+1 web site 2013年1月
記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(大学・研究所紀要) 単著
201301 ISSUE(特集:2012-2013年の都市・建築・言葉)
その他リンク: http://10plus1.jp/monthly/2013/01/enq-2013. php#2222
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「〈天災は忘れない頃にやって来る〉あるいは、〈災禍は忘れることができない〉」
10+1 website 2012年2月
記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(商業誌、新聞、ウェブメディア) 単著
その他リンク: http://10plus1.jp/monthly/2012/02/enq-2012. php#1691
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「〈非常事態〉とは〈日常〉の死角に過ぎない―2011年度〈横 浜建築都市学〉総括」
山本理顕、北山恒、梅本洋一、榑沼範久、野原卓
『IUI YEARBOOK 2011-2012』(横浜国立大学都市イノベーション研究院) 2011年4月
記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(大学・研究所紀要) 共著
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「なにかちがうかもしれない―違和感をめぐるパフォーマンス」
高嶺格、榑沼範久
『IUI YEARBOOK 2011-2012』(横浜国立大学都市イノベーション研究院) 2011年4月
記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(大学・研究所紀要) 共著
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「すべては初めて起る―2012年福島の桜」
大森克己、彦江智弘、榑沼範久
『IUI YEARBOOK 2011-2012』(横浜国立大学都市イノベーション研究院) 2011年4月
記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(大学・研究所紀要) 共著
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「横浜国立大学Re:DESIGN vs 岡山県立大学 RE DESIGN」
吉原直彦(岡山県立大学) 大石健弘/市原拓/宮一紀(横浜国立大学)
『REPRE』 5 2006年3月
記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(その他) 共著
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「声を聴く」
大里俊晴(横浜国立大学)
『REPRE』特集=声・音とデザイン、岡山県立大学デザイン学部 3 37 - 46 2004年
記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(その他) 共著
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「音と視覚-デジタルマテリアリズムとアート、デザイン」
久保田晃弘(多摩美術大学)、吉原直彦、八尾里絵子(岡山県立大学)
『REPRE』特集=声・音とデザイン、岡山県立大学デザイン学部 3 5 - 20 2004年
記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(その他) 共著
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「舞踏/舞踏譜による身体の変容」
和栗由紀夫(好善者主宰)、武藤浩史(慶応義塾大学)、松澤慶信(日本女子体育大学)
『運動+(反)成長-身体医文化論II』(武藤浩史・榑沼範久編)、慶応義塾大学出版会 2003年
記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(その他) 共著
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「映画・映像の顔とデザイン」
吉原直彦、尾方義人、土肥圭太郎(岡山県立大学)
『REPRE』特集=顔とデザイン、岡山県立大学デザイン学部 2 15 - 26 2003年
記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(その他) 共著
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「セクシュアリティを考える10冊」
『InterCommunication』、NTT出版 33 48 - 49 2000年
記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 単著